5950Xネタも最終回となりました。雪華です。
今回は〆に5950Xの挙動をサクッと検証したので、そちらをご紹介。
一般ユーザーには縁のない話かもしれぬ。
(前回までの話)
(以下本文)
13)準備:詳細な挙動を見ていこう
<検証環境の設定>
CPUに組み合わせて使う環境としては
M/B:ASRock X570 Steel Legend
RAM:DDR4-3600 @CL18 8GB x4
GPU:RTX 3070 + GTX 1080
OS:Windows 10 Pro
と、冷却にAK400(エントリー空冷)であることを除けば至って普通の環境です。
昨シーズン程室温を下げることができないので恐らく室温は28℃前後。(てか去年年中室温20℃アンダーを維持してたのは流石にアホとしか)
CPUクーラー周りはファンをAB120RWに換装した上でBIOS初期設定の冷却プロファイルを採用。
ケースのエアフローも吸気強めにしてあります。
<サクッとおさらい&ルール説明>
5950Xは8C16TからなるCCDを2基搭載することで16C32Tを実現したCPU。
そのため、どのコアがどのCCDに所属するか?という点が問題になる。
そこで今回は、HWiNFOとタスクマネージャーから、実際に負荷の掛かったコア数を推測。
中の人がモニタリングして、頻繁に出るパターンの時に手動でスクリーンショットを取得。
その中でもスクリーンショットから読める最高値を採用しています。
ストレステストに使うソフトウェアはみんな大好きCinebench R20。
スレッド数はx1, x2, x4, x6, x8, x10, x12, x14, x16, x24, x32の10パターン。
これを5分連続実行し、実行中最もよく見られたパターンをスクリーンショットで撮影。
なお、4T以上負荷時のみ、テスト終了後の最高温度も記録。
<個体の特性を忘れずに>
今回入手した個体はCCD #0の方が電力特性が良く、その中でも#2・#3のコアが特に優秀だと判定された。
より正確には、
(優)#3>#4>#1>#2>#7>#6>#5>#8>#16>#14>#15>#12>#10>#13>#11>#9(劣)
または
(優)#2>#3>#0>#1>#6>#5>#4>#7>#15>#13>#14>#11>#9>#12>#10>#8(劣)
とのこと。
恐らくCCDの区別なく考えると多少入れ替わるかもしれない。
CCDを跨ぐことによるレイテンシの方がより大きなデメリットなのでこのようなオーダーになったのだろう。
※HWiNFOとRyzen Masterの間にナンバリングのズレがある。
※HWiNFOの中ですらナンバリングのズレがある。
*中の人『0番スタートに統一してくれ』
14)結果:All or Nothingが一番使いやすい
<1CCDの場合>
まずはブラウジングやOfficeアプリといった、軽作業中のスパイクを想定したテスト。
そこから少しずつ負荷を上げていく。
[x1 Thread]
負荷の掛かり方を見ていこう。
特に優秀な#2・#3が物理論理の別なく高負荷を捌いていることがわかる。
3番手の#0で少し使用率が上がるのはOSやモニタリングソフトの分だと思われる。
[x2 Threads]
ここでも特に優秀な#2・#3の使用率が上がったぐらいで、まだ他のコアでの肩代わりは起こっていない。
[x4 Threads]
ここで#0~#3の最優秀4コア(特に物理スレッド)が高負荷になる。
#0・#1は特に物理スレッド偏重な使われ方となった。
バックグラウンドと思しき処理は5番手に相当する#6が担っているように思われた。
※カーネル時間に相当する点線が#0~#3で非常に低いため
[x6 Threads]
更に負荷を掛けても傾向は変わらず。
バックグラウンド・カーネル処理は7番手の#4が大半を担っていたように見える。
[x8 Threads]
CCD #0に相当する#0~#7コアが全て高負荷状態となる。
バックグラウンド処理は論理スレッドではなく、別のCCDにある#15に移ったと考えられる。
加えて、この時点でCPU温度は85℃に到達。
90℃を下回るようにクロックを自動調整してくれるとは言え、多少不安になる温度となった。
…ここまでの挙動を見る限り、5950Xの扱いやすさが目立つのは軽作業時に限られる。
また、高負荷時ベンチ結果を掲載している他レビューサイトと比較しても、電力効率が酷い状況としか言えない。
軽作業なら更にコア数・TDPが共に低い5600Xで十分だ。
では5950Xは何がどう優れているのか?
それを検証するために、負荷スレッド数を更に増やす。
<2CCD・物理スレッド重視の場合>
[x10 Threads]
2CCDに負荷が分散し始めたが、『優秀なコアから順番に負荷を割り振る』傾向は変わらず。
この辺りはまだ温度が高いとは言え、先程のx8 Threadsに比べると下がった印象を受けた。
[x12 Threads]
ここでも傾向は何ら変わらず。
一方でx10 Threadsと比べると更に温度は下がる。
消費電力がx8 Threadsで頭打ちになってから、コア間での分配が始まったと見て良いだろう。
[x14 Threads]
ここに来て最下位付近のコアの扱いから、挙動が変化し始めた。
最下位付近のコア使用率は、物理スレッドで100%張り付きしない。
一方でCCD #0の論理スレッド使用率が暴れ始めた。
ここまで来ると電力の割振やCCD間レイテンシを考慮しても、優秀な論理スレッドを活用した方が速くなるかもしれない。
[x16 Threads]
論理スレッドの使用率がより大きく暴れるようになったぐらい。
最下位コアの#8はほとんどニート状態だ。
ブービーの#10もクロック・使用率・消費電力共に伸び悩む。
…ここまでの検証で、2基あるCCDのうち片方を常用し、他方を高負荷時・非常時に使うような挙動が確認された。
一方で、物理16Cあっても16Tでは上手く負荷を掛けきれないことが判明。
そこで、全物理スレッドを活用できそうなラインと、最高負荷時の検証も行った。
<2CCD・総力戦の場合>
[x24 Threads]
x24 Threadsまで負荷を掛けても、#8はどうしようもないニートだった。
一方でCCD #0は物理論理いずれもスレッド使用率100%に到達。
また、CCD #1でも#8以外の物理スレッドが全て使用率100%となった。
個体差かもしれないが、余程遅い物理スレッドよりも論理スレッド分散の方が速いのだろう。
[x32 Threads]
最後は華の総力戦、16C 32T全てを使い切った場合。
ここまで来ると流石のニートこと#8ですら使用率100%となる。
カーネル時間の点線を見るとCCD #0で多少高いことから、タスクの割当に優先順位がありそうだ。
また、これは中の人の体感だが、x32 Threadsが負荷時の中で一番静かに思えた。
…なかなか面白い傾向だ。
15)総括・感想
<結果のまとめ>
先程のデータから結果を抜き出した表がこれ。
傾向としては
- 動作クロックはコア数・スレッド数に応じて徐々に減少
- 消費電力は8Cで頭打ち
- 2CCDに電力が分散する都合で高負荷の方が却って冷やしやすい
- 温度のピークは8C動作時
また、TDP 105Wで8C 16Tの5800Xが爆熱だと言われていたが、これと似たような挙動を5950Xでも確認できた。
ここから考えるに、5950X(に限らずRyzen全般)は
- CPU各コアの限界まで回す
- コアの限界まで回し切ったらPPTの限界までブーストさせるコアを増やす
- PPTも限界に達したらクロックを下げて電力を分散させる
という挙動が見られた。
更に、負荷を掛けるコアは電力特性の良い、クロックの伸びやすいコアから順番であることも判明。
Zen3のホモジニアス16C構成で最大限、シングル性能とマルチ性能を両立したかったのだろう。
全コア高負荷時にシングル高負荷時と比べ大幅にクロックが下がる難点はある。
しかし、「多コアをゆっくり」を上手く使いこなしている、という点での完成度は一級品。
とすると、普段遣いで軽い作業をやるにも、研究や創作でゴリゴリ使うにも、丁度いいバランスということになる。
唯一中途半端に高負荷が掛かるゲームだけは、8Cを高消費電力でブン回すせいで効率悪いが…
それを弱点と見てもなお裏で動かせるタスクへの余裕や、M/Bの互換性を考えるとお釣りが来る。
まとめると…
[5950X 良いところ]
- 優秀なシングル性能
- 最強格のマルチ性能
- ホモジニアス16C構成による安定性
- 優秀なタスク配分(これはチップセットドライバによるところでもある)
- 最高負荷時の優秀な電力効率
- 極めて優れた互換性
- エントリー空冷でも運用可能なブースト機能
- 64bitソフトで好き嫌いなく安定した高性能
[5950X 悪いor微妙なところ]
- 低~中負荷時に電力効率が悪化
- シングル最強はAlder Lakeに奪われた
- やはり中負荷時は爆熱
- 32bitソフトだと8年落ちのCPUに負けることがある
- 入手価格(8月時点で新品8万円台と言えど)
といった感じか。
それでも、安定した性能を発揮できることや高負荷時の扱いやすさを考えると、些細な問題。
big.LITTLEを嫌う理由があるなら、真っ先に購入候補に挙がる一品なのは間違いないだろう。
<感想>
最後の最後にメチャクチャ重たくなってしまった…
それはさておき、やっぱAM4世代最強のCPUは何をやらせても(大抵の場合)凄まじい性能で、まず不満に思うことはないですね。
分割払いを解禁してまで買った甲斐はある。
ただ、流石に研究以外で使うとなるとオーバースペックにも程があるレベルなので、3700Xでサブ機を組み直してもいいかも…とは思ってます。
あとはZen4・Raptor Lakeの発売に間に合ったので良かった、なんてね。
改めて思うのは、1年半もの間最強の一角を担い続けた5950Xと、凄まじい電力効率を実現したZen3がバケモノ過ぎた、ってこと。
もう一つは、最近のPCはシングルもマルチもオーバースペック化が激化してて選びにくい、ってこと。
色々考えた末にこうなりました。
確かに、スペック至上主義だったり、目的が決まっている人だったりすれば、選びやすいのは間違いない。
ただ、普通にOfficeしか使わない、とか言われるといきなり「アンダーかオーバーのどちらか」しか選べなくなる。
そんな中で新製品の性能競争が激化しても、多くの一般的なユーザーは…価格と消費電力に振り落とされる一方だと思います。
『そこそこ使える性能を、お手軽価格で』
これに尽きるかと思います。
これに気付けたのも現役最強の一角を自分で触って動かしたから、てのは実感してますね。
そんな意味では、これまで使い続けてきた3700Xにも感謝です。
これからは5950Xも、3700Xも活用しつつまだ見ぬアーキテクチャの予想やら何やら、ハードウェア方面で楽しく自作PCを楽しんでいきたいと思います。
~完~
(以下オマケ)
さて、これにて5950Xに絡んだ話は一旦終わりとなります。
Twitter運休中に書き切ると言った直後にバタバタしたりしてましたが、(数時間前の)滑り込みセーフで宣言通り書き切りました。有言実行。
今後の予定としては
- とりあえずTwitter運転再開
- 一人旅(新潟・長野)
- ↑に関するレビュー
が主なイベントになるかなぁ、と思います。
あと、これから先の話なのですが、Twitterの浮上率はしばらく下がったままになるかもしれません。
把握だけよろしくお願いします。
2022.08.08
Setsuka・G・Katsuragi
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